フジ住宅裁判訴訟|フジ住宅に何が起きた?ヘイトハラスメント?その実態を解説

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メディアのニュース記事を見て、フジ住宅の裁判を知った方も多いのではないでしょうか?
フジ住宅は「社内で特定の国や民族を蔑ろにする文書を配布した」とされ、二審敗訴の判決が下されました。

ですが、今回のフジ住宅の裁判には、実はメディアにはほとんど報道されていない事実も存在します。ヘイトハラスメントは本当にあったのか?原告側、被告側の主張は?

今回はフジ住宅裁判の全容や争点などを詳しく調べてみたので解説していきます。

フジ住宅裁判|フジ住宅ってどんな会社?

フジ住宅は分譲住宅やマンションの開発や販売、注文住宅、建て替え、中古住宅・マンションの販売、賃貸・分譲マンションの管理、土地の有効活用など不動産に関する幅広い事業を手掛ける会社です。

本社が大阪府岸和田市にあり、大阪・兵庫・和歌山を中心に近畿圏で活動しています。
現会長は創業者の今井光郎氏、代表取締役は宮脇宣綱氏が務めています。

1973年1月に創業し、2022年1月には創業49年を迎えます。
資本金48億7,206万円、グループ会社を含む連結従業員数は1200名以上を抱える大規模な不動産会社です。

フジ住宅裁判|全容と判決について

フジ住宅は2015年に子会社にパート勤務する在日コリアン人の女性に損害賠償を求める裁判を起こされました。
一審判決・二審判決共にフジ住宅側の敗訴という結果になっています。
裁判により認められた違法性とは何なのかを理解するために、裁判の全容と争点を解説しましょう。

原告の女性が訴訟を起こした理由

フジ住宅は社員教育として、日本人の主権や意見を尊重する内容の資料配布を行っていました。
「その資料が特定の国や民族を非難する記事や雑誌のコピーである」と原告である従業員(在日コリアンの女性)が主張しています。

女性は弁護団を通じて資料の配布の中止を申し入れるものの、中止にはいたりませんでした。また業務とは直接的な関係が無いと思われる特定の中学教科書に関するアンケートの提出等の活動を行うよう促されたことも相まって、訴訟に踏み切りました。

2015年訴訟~2020年一審判決

原告女性は2015年の8月にフジ住宅と今井会長に対して、3,300万円の損害賠償の請求と資料配布の差し止めを請求する裁判を起こします。
訴訟提起後も社内での資料配布は続き、訴訟から約5年後の2020年7月に、大阪地裁はフジ住宅の違法性を認め、原告へ110万円の賠償の支払いを命じました。

控訴審へと発展

敗訴後も社内での資料配布は止まらなかったことから、原告と弁護団は大阪高等裁判所に控訴審を起こします。
2021年1月から7月にわたり合計4回の口頭弁論期日が実施され、同年11月12月に二審判決でフジ住宅は110万円から132万円に増額した賠償の支払いと資料の差し止めの判決が下されました。

フジ住宅裁判|高裁判決

高裁判決では違法性が認められた点がいくつかあり、賠償の増額と資料の差し止めという判決が下されました。
しかし、今回の裁判では原告の訴えが全て認められたわけではありません。

ここからは高裁判決で違法性があると認められなかった部分と企業としての配慮が求められる部分について見ていきましょう。

高裁判決で違法と認められなかった点

高裁判決では、配布された資料が原告女性を念頭に置いて書かれたものではないため、差別的な言動とは認められないと判断されています。
配布資料の中にはYouTube動画の紹介画像があり、その動画コメント欄に差別的な文言が含まれていました。ですが、そのコメントはフジ住宅とは全く関係のない、第三者が書き込んだものです。
コメントの部分をフジ住宅が意図的に表示したわけではないのであれば、差別目的で行った行為とは言えません。
また、資料には識者による一般的な評論も大量に掲載されていました。
このことから原告女性の中傷を目的として作られたものとは言い難いため、資料の配布自体に違法性はないという結論が出されたのです。

高裁判決でのポイント

フジ住宅側には、仮に意図したものではないにせよ、特定の人種や民族を貶めるような表現・コメントが使われている部分に関しては、コメントを塗りつぶす、あるいは「不当な表現が使われています」などの注釈をつけるといった職場環境への配慮が必要でした。
また、原告女性を批判する感想文の文章を社内でそのまま配布した点も賠償額が上がった要因につながっています。

ただし、大手新聞の記事や識者の評論など、正当な評論だと思われる文章の配布は自由であり、違法性はありません。今後も社員育成のために必要な資料であれば、問題なく配布は可能です。ただ、配布にあたっては、強制的に社員に読ませるのではなく、あくまでも任意でなければなりません。

そして、今回の文書差し止めの判決に関しては、全ての配布資料が差し止めになったわけではありません。
どこまで資料配布の差し止めとなったかという情報はほとんど報道されておらず、テレビ視聴者や新聞購読者、ネット閲覧者に誤解を与えます。今回の判決では不当な表現やコメントが記載された文章に限られています。

また、大阪高裁は本裁判に関するメディアの報道が不適切であることも言及していました。
まるでフジ住宅が原告本人を差別的に扱ったかのような印象の記事は、企業のイメージを大きく低下させます。
高裁は、今回の偏向報道ともとれるメディアの報道姿勢は不適切だと判断したのです。

 

フジ住宅裁判|フジ住宅側の主張

資料の配布を止めなかったフジ住宅ですが、そこにはどのような主張があるのでしょうか。

公式サイト訴訟・裁判に関する当社の主張から引用します。

当社は、私企業においては、会社のDNAともいうべき創業者の思想信条を反映した個性ある経営方針が広く認められるべきだと考えます。また、このような参考資料の配布は、社員にそれを読まない自由を確保してそれに対する不利益扱いを行わない以上、申立人の人権を侵害しているとは考えておりません。勧告は「社会的に許容される合理的範囲を超えて他人の法的利益を侵害していると認められるときは人権侵害にあたる」としています。しかし、他国の政府やマスコミや市民等が日本や日本人に対する執拗な批判や侮辱を繰り返しているとき、それに対する政治的批判や反論であって特定の個人に向けられていない言論が、批判された民族にルーツをもつ個人に不快感をもたらしたからといって、その人権まで侵害しているといえるのか、勧告はきちんと説明していません。
当社は引き続き原著作者等の表現や社員の読まない自由について配慮しつつ、当社の経営理念に沿って啓発活動に努める所存です。

「閲覧は任意であった。創業者の思想信条を広く認められるためのものにすぎず、人権侵害の意図はない。」
との主張のもと、資料は配布し続けられていたようです。

フジ住宅裁判|まとめ

今回はフジ住宅裁判の全容と争点についてご紹介しました。
簡単に今回の記事の重要点をまとめてみました。

  • 人種差別を煽動するような不適切な文章や、原告本人を中傷する感想文を未加工のまま配布したことが問題
  • フジ住宅側は不適切な表現・コメントの塗りつぶし・削除など配布にあたり職場環境への配慮が求められる
  • 正当な評論と思われる文章の配布に違法性はなく、今後も配布は可能
  • 今回配布差し止めとなったのは不適切な表現・コメントが記載されたもののみ

判決でも言い渡されているように、フジ住宅は、大阪府内の一戸建て供給戸数がトップクラスで東証一部上場企業であり、4年連続で健康優良法人に認定されるなど高い評価を得ていて、民族的差別が醸成されない職場環境作りが社会的に期待される立場であるにも関わらず、そうした職場環境づくりを怠った点は否めません。

しかし、原告女性を貶めようという意図は全くなかったことを理解していく必要があります。

また、フジ住宅裁判はメディアの報道にも問題があります。フジ住宅が明らかなヘイトハラスメント企業であるととの印象を持ってしまってる人も多いかもしれませんが、それはメディアの報道の印象が大きいと言えます。

会社が原告を一方的に不当に扱ったような報道がなされたり、まったくもって根拠のない根も葉もないデタラメの情報も出回ったりしています。

過度な誹謗中傷は企業の印象を大きく傷付け、不利益を与える行為であり、逆に罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
今後のフジ住宅ですが、高裁判決を不服として、最高裁へ上告する方針を固めています。

最高裁ではどんな結果となるのか、気になる方は今後の情報も見逃さずにチェックしてみてください。